生物?環境
「原始的」な脊椎動物、ヌタウナギの嗅覚関連受容体の多様性を解明
原始的な脊椎動物の特徴を多く残しつつ嗅覚系を発達させた円口類ヌタウナギについて、嗅覚関連受容体を調べた結果、特定の嗅覚関連受容体の遺伝子の数が独自に増加していること、初期の脊椎動物がこれまで考えられていた以上に多様な嗅覚関連受容体を持っていた可能性を見いだしました。
私たちヒトを含む動物は、においを感じることで食べ物を探したり危険を察知したりします。その土台になっているのが、嗅覚に関連する受容体タンパク質です。脊椎動物の嗅覚関連受容体は大きく4種類(OR、V1R、V2R、TAAR)に分類されますが、これらの進化的起源や初期の多様化の詳細はよく分かっていませんでした。
そこで本研究では、原始的な脊椎動物の特徴を多く残す円口類に属するヌタウナギ(Eptatretus burgeri)の嗅覚関連受容体について調べました。まず、ヌタウナギのゲノムを調べ、嗅覚関連受容体の種類と数を調べた結果、48個のOR、2個のV1R、そして135個ものV2R遺伝子が見つかりました。次に、これらの遺伝子が嗅覚器で発現していること、つまり嗅覚関連受容体として実際に機能しているらしいことを確かめました。これまで、円口類には嗅覚関連受容体として機能する真のV2Rはなく、従って、脊椎動物の共通祖先も真のV2Rを持っていなかったと考えられていましたが、今回の研究によってヌタウナギにも真のV2Rが存在し、しかも著しく数を増やしていることが判明しました。このことは、脊椎動物が初期段階から多様な嗅覚関連受容体を持ち、系統ごとに独自の多様化を遂げたことを示唆しています。
本研究から、ヒトを含む脊椎動物の嗅覚の進化を解き明かすための重要な知見がもたらされました。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
网上哪里能买篮彩 生命環境系鈴木 大地 助教
网上哪里能买篮彩大学院人間総合科学学術院
仮屋山 博文 (研究当時、現:理化学研究所生命機能科学研究センター 訪問研究員)
島根大学 学術研究院 農生命科学系
山口 陽子 助教
掲載論文
- 【題名】
-
Hagfish olfactory repertoire illuminates lineage-specific diversification of olfaction in basal vertebrates.
(ヌタウナギ嗅覚レパートリーが基盤的脊椎動物の嗅覚の系統特異的多様化を明らかにする) - 【掲載誌】
- iScience
- 【DOI】
- 10.1016/j.isci.2025.114118
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