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問題飲酒の程度によってノンアル飲料提供による減酒効果の違いを確認

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(Image by dhtgip/Shutterstock)
 ノンアル飲料の提供は飲酒量の減少に有効な手段として指摘されています。本研究では、アルコール使用障害同定テストで評価される問題飲酒の程度によって減酒効果に違いがあることを確認し、飲酒の問題が大きいとノンアル飲料提供による減酒効果が抑制されることが分かりました。

 過剰なアルコール摂取は世界的な課題の一つで、国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも含まれています。過剰な飲酒量を減らすための対策として、アルコールテイスト飲料、いわゆるノンアルコール飲料(以下、ノンアル飲料)の利用が挙げられます。本研究チームではアルコール依存症の患者などを除いた20歳以上へのノンアル飲料提供で飲酒量が有意に減少することを見出しましたが、飲酒の問題が大きい人にノンアル飲料を提供すると、飲酒欲求を高め、逆に飲酒量が増えてしまう可能性があることも知られています。そこで本研究はノンアル飲料の提供が飲酒量に及ぼす影響について、アルコール使用障害同定テスト (AUDIT) で判定した問題飲酒の大きさの影響に着目しました。

 アルコール依存症の患者などを除いた20歳以上の成人123人を介入群と対照群に無作為に分け、介入群にノンアル飲料を12週間提供しました。対照群と介入群の4週間当たりの平均飲酒量減少率の違いについてAUDIT得点が7点以下、8-11点、12-14点、15点以上の4グループに分けて検討したところ、7点以下、8-11点、12-14点のグループでは介入群の飲酒量減少率が対照群を上回っていましたが、15点以上のグループでは介入による飲酒量の減少は認められませんでした。また、介入群における平均飲酒量減少率については7点以下のグループと比較して、12-14点及び15点以上のグループで有意に抑制されることが明らかとなりました。一方で、いずれのグループもノンアル飲料提供による飲酒量の増大は認められませんでした。

 これらの結果から、飲酒の問題が小さいとノンアル飲料提供による減酒効果が大きいものの、飲酒の問題が大きいとノンアル飲料提供だけでは減酒効果に乏しく、医療従事者によるカウンセリングなど、他の有効なアプローチを組み合わせていく必要があることが示唆されました。

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プレスリリース

研究代表者

网上哪里能买篮彩医学医療系/健幸ライフスタイル開発研究センター
吉本 尚 准教授
土橋 祥平 助教

掲載論文

【題名】
The effectiveness of reduction in alcohol consumption achieved by the provision of non-alcoholic beverages associates with Alcohol Use Disorders Identification Test scores: a secondary analysis of a randomized controlled trial.
(ノンアルコール飲料の提供による飲酒量減少効果はアルコール使用障害同定テストの得点と関連する:ランダム化比較試験の二次解析)
【掲載誌】
BMC Medicine
【DOI】
https://doi.org/10.1186/s12916-024-03641-3

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