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閉鎖空間内の長期共同生活では仕事とプライベートの境界が曖昧になる

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(Image by DC Studio/Shutterstock)
 モスクワで行われた240日間の閉鎖実験「SIRIUS-21」において、5人の参加者間の人間関係を調査しました。その結果、実験期間後半になると、仕事時間とプライベート時間の人間関係の境界が曖昧になることが観察されました。一方、これに伴うパフォーマンスレベルの低下は見られませんでした。

 有人宇宙ミッションは月や火星を目指すステージへ進もうとしており、より狭い宇宙船内で、限られたクルーメンバーが長期にわたって生活をすることが予想されます。クルー同士の人間関係は、チームとしてのミッション遂行に大きく影響を与えると指摘されています。

 本研究では、人間関係の変容のプロセスを定量化することを目的に、2021年よりモスクワで行われた240日間の閉鎖実験「SIRIUS-21」における、参加者5名の人間関係について調査を行いました。

 その結果、実験初期段階では参加者間での対立や分離が生じ、精神心理の専門家による介入により、人間関係は安定化しました。また、実験の進行に伴い、仕事時間とプライベート時間の人間関係の境界が曖昧になる傾向が見られました。参加者のうち、ある2名の間では不和の傾向が持続的に見られたものの、チームの結束力を示す指標は維持され、パフォーマンスレベルは一貫して高かったことが明らかになりました。

 本研究結果は、長期間の閉鎖空間におけるミッションでは、専門家による適時介入がクルーの人間関係の安定化に有効であること、またクルー間の対立や、仕事時間とプライベート時間の境界が曖昧になることが、必ずしもチームに悪影響を与えるわけではないことを示唆しています。将来の有人宇宙ミッションにおいては、クルー間の人間関係をモニタリングすることで、問題の早期発見と適切な介入が可能になると考えられます。

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プレスリリース

研究代表者

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笹原 信一朗 教授
三垣 和歌子 医学学位プログラム(一貫制博士課程)4年次

掲載論文

【題名】
How isolated and confined-environment missions shape human interactions: SIRIUS-21
(閉鎖隔離環境におけるミッションがどのように人間関係を形作るか:SIRIUS-21における研究)
【掲載誌】
Acta Astronautica
【DOI】
10.1016/j.actaastro.2025.05.004

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