医療?健康
車いす利用者の施設入所後の骨折リスクを初めて定量評価

車いすを使用する高齢者が施設に入所すると、入所前とは異なる車いすを使わざるを得ない場合があり、転倒や骨折のリスクが懸念されます。施設に入所する高齢者を分析したところ、入所前と異なる車いすを使用した可能性がある5人に骨折が発生した一方、そうでない人には骨折は認められませんでした。
要介護高齢者の生活を支える車いすは、身体機能に適したものを利用することが重要です。介護保険制度により、高齢者は福祉用具貸与サービスを通じて、さまざまな機能を備えた多機能型車いすを自宅で低負担で利用できます。しかし、介護老人福祉施設に入所すると、このサービスの対象外となるため、施設が所有する標準型車いすを使用する場合が多いとされています。その結果、入所前に利用していた多機能型車いすを継続して使用できず、転倒や骨折のリスクが高まる可能性があります。
今回、茨城県の医療?介護レセプトデータを用いて、介護老人福祉施設に入所した要介護高齢者215人を分析しました。その結果、入所後の骨折は、入所前に多機能型車いすを使用していた人(全体の約4割)で5人に発生した一方、入所前から標準型車いすを使用していた場合には認められませんでした。
本研究では、入所後に実際に使用していた車いすの種類や、骨折が発生した状況までは把握できていません。そのため、「入所前に多機能型車いすを使用していた要介護高齢者が、入所後に同様の車いすを利用できなかったために骨折につながった可能性がある」ことを直接示すものではありません。しかし、介護老人福祉施設における車いす利用の課題の一端を、定量的に明らかにした初めての研究です。今後はアンケート調査などを通じて、施設の車いす所有状況や骨折以外への影響についても明らかにし、入所者が適切な車いすを利用できる体制づくりに向けた研究を進めていきます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
网上哪里能买篮彩医学医療系/ヘルスサービス開発研究センター田宮 菜奈子 教授
掲載論文
- 【題名】
-
Type of Wheelchair Used before Nursing Home Admission and Fall-Related Fractures after Nursing Home Admission
(介護老人福祉施設入所前に使用していた車いすの種類と入所後の転倒関連骨折の実態) - 【掲載誌】
- JMA Journal
- 【DOI】
- 10.31662/jmaj.2025-0194
関連リンク
医学医療系ヘルスサービス開発研究センター