医療?健康
睡眠アプリの記録から睡眠パターンを分類し労働生産性との関連を検証
睡眠に関するスマートフォンアプリの利用者約8万人の大規模データから、睡眠の特徴と労働生産性との関連を調査しました。その結果、「社会的時差ぼけ型」や「不眠傾向型」は労働生産性が低い可能性が示唆されました。
睡眠不足や睡眠リズムの乱れが集中力や生産性に及ぼす影響に関する研究は、これまで、多くが自己申告の睡眠アンケートや小規模な調査に基づいていました。
本研究では、睡眠行動を客観的かつ大規模に把握するため、日本においてスマートフォンの睡眠アプリを利用している就業者の男女約8万人を対象に、アプリの利用記録から、総睡眠時間、寝つきまでの時間(入眠潜時)、夜間の中途覚醒の割合、体内時計のタイプ(クロノタイプ)、平日と休日の睡眠リズムのずれ(社会的時差ぼけ)などの情報を抽出し、質問票回答で得られた「プレセンティーイズム」(労働生産性の低下)スコアとの関係を検討しました。
その結果、睡眠時間が短すぎても長すぎても労働生産性が低下する「U字型の関係」が見られました。また、寝つきの悪さや中途覚醒の多さ、社会的時差が大きい人ほどパフォーマンスが下がる傾向が認められました。さらにAI解析を用いて、似たような睡眠の特徴を持つ人をグループ化したところ、5つのタイプ(「健康的な睡眠」、「長時間睡眠」、「断片的睡眠」、「不眠傾向型」、「社会的時差ぼけ型」)に分類され、そのうち「社会的時差ぼけ型」と「不眠傾向型」で特に労働生産性の低下が顕著でした。
本研究は、適切な睡眠時間の重要性や不規則生活がもたらす影響を示唆すると同時に、スマートフォンアプリによって就業者の睡眠状態を把握し、仕事中のパフォーマンス低下を予測できる可能性を示すものであり、個人に合わせた睡眠改善や職場環境づくりへの応用が期待されます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
网上哪里能买篮彩高等研究院(TIAR)国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)柳沢 正史 教授
掲載論文
- 【題名】
-
Association of Sleep Patterns Assessed by a Smartphone Application with Work Productivity Loss Among Japanese Employees.
(スマートフォンアプリによって評価された睡眠パターンと日本人労働者における労働生産性損失との関連) - 【掲載誌】
- npj Digital Medicine
- 【DOI】
- 10.1038/s41746-025-02155-3
関連リンク
高等研究院(TIAR)国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)