生物?環境

エタノール噴霧によりトマトの耐暑性と糖度が向上する

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 トマトの栽培時にエタノールを噴霧すると、高温ストレス耐性が付与されることを見いだしました。さらに、果実の糖度やビタミンC含量なども向上しました。猛暑による農業への影響が懸念される中、身近で安価なエタノールを用いる栽培法が、持続的な食糧生産に大きく貢献すると期待されます。

 近年、気候変動により世界各地で猛暑日が増加し、農業生産においては、花粉の不稔や受粉不良による結実率の低下、果実品質の劣化など、高温ストレスが大きな問題となっています。特に、夏季のトマト栽培では、成長抑制や果実形成の阻害といった影響を緩和させることが求められています。

 本研究グループではこれまでに、光受容体フィトクロムAを欠損したトマト変異体phyAが高温ストレス耐性を示すことを見いだしています。今回、phyA変異体の高温ストレス耐性をさらに向上させるため、高温環境下での栽培中にエタノールを噴霧し、その効果を検証しました。その結果、生育の促進向上や果実の糖度およびビタミンC含量の上昇が見られ、高温ストレス耐性だけでなく、果実の品質が改善されることを明らかにしました。

 分子レベルの解析を行ったところ、エタノールの噴霧により、熱ショックタンパク質をコードする遺伝子や抗酸化酵素遺伝子の発現が高められることが分かりました。また、オーキシンやジベレリンといった植物ホルモンシグナル伝達に関わる遺伝子の発現も促進されており、これらの遺伝子の働きが、成長促進と果実品質改善をもたらしたと考えられます。

 本研究成果は、気候変動下でも利用可能かつシンプルで環境に優しい栽培手法によって、トマトをはじめとする農作物の高温ストレス耐性を高められる可能性を示唆しており、持続的な食糧生産に大きく貢献することが期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

网上哪里能买篮彩生命環境系
三浦 謙治 教授

理化学研究所環境資源科学研究センター
関 原明 チームディレクター

掲載論文

【題名】
Application of 4-CPA or ethanol enhances plant growth and fruit quality of phyA mutant under heat stress.
(4-CPAまたはエタノール処理により、高温ストレス下におけるphyA変異体の植物成長と果実の品質を向上させる)
【掲載誌】
Scientific Reports
【DOI】
10.1038/s41598-025-17929-8

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