生物?環境

ゲノム編集により高糖度?高GABA?高ビタミンCのトマトを作出

研究イメージ画像
(provided by Kenji Miura)
 ゲノム編集技術を用いて複数の遺伝子を改変することにより、糖度、GABA(機能性アミノ酸)含量およびビタミンC濃度を同時に向上させたトマト果実の開発に成功しました。本技術は、栄養価や健康などに関わる機能性を高めた作物の作出に寄与すると期待されます。

 トマトは世界で最も広く栽培される果菜類である上、果実の甘味(糖度)や多彩な栄養成分を持っています。さらに近年、ゲノム編集技術を用いた高GABA(機能性アミノ酸)トマトなども実用化されています。

 本研究では、ゲノム編集技術を用いて、糖度、GABA含量およびビタミンC濃度を同時に増加させたトマト果実の作出に成功しました。GABAの蓄積に関してすでに知られているGAD3遺伝子に加えて、植物のストレス応答に関わる遺伝子として知られるESK遺伝子を標的にしたゲノム編集を行うことで、複数の品質を同時に高めたトマトを作出しました。このトマトは、野生型トマトに比べてBrix値(糖度)が約2倍上昇し、GABAは約5倍、ビタミンCも約1.5倍となりましたが、果実の重さ(サイズ)は半分近くまで減少しました。これは、遺伝子改変に伴う導管の形成異常が原因と考えられます。

 また、トマトESK遺伝子の機能を調べたところ、果実の糖度の蓄積が見られた一方で、シロイヌナズナでは見られる低温ストレス耐性は示さず、乾燥ストレス耐性を示しました。すなわち、シロイヌナズナESK遺伝子とトマトESK遺伝子には機能的な違いがあることが示されました。

 本研究成果は、機能性食品への需要が高まる中で、一度のゲノム編集操作で複数の成分量を同時に高めることができるものであり、新たな作物改良技術につながると期待されます。

PDF資料

プレスリリース

研究代表者

网上哪里能买篮彩生命環境系
三浦 謙治 教授

掲載論文

【題名】
Enhancing tomato quality, high sugar content and GABA accumulation, with mutations in ESKs and GAD3 genes.
ESK遺伝子およびGAD3遺伝子へ変異を導入することで、高糖度、GABA蓄積促進といったトマトの品質向上を可能とした)
【掲載誌】
Scientific Reports
【DOI】
10.1038/s41598-025-28888-5

関連リンク

生命環境系