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なぜ胆管は門脈の隣にだけあるのか?~特異な細胞と組織内の均一性のせめぎあい~

研究イメージ画像 (Image by Cinemanikor/Shutterstock)


受精卵という一つの細胞から私たちの体がつくられていく途中では、複数の種類の細胞になり得る未分化な細胞集団から分化した細胞が規則的に配列します。この過程で重要な働きをするのが、細胞膜タンパクであるDeltaとNotchによる細胞間の情報伝達経路です。気管上皮では、このDelta-Notchシグナル経路により、Notchシグナルの高い細胞と低い細胞が空間的に交互に配列します。他方、肝臓の発生においては、高いNotchシグナルを持つ細胞が胆管になることが分かっていますが、多くの動物種で胆管は門脈の隣にだけ存在し、交互には配置していません。


本研究では、既に提唱された数理モデルを使って、このシグナル経路が交互配置と片側配置の相異なる二つの状態をつくり出す仕組みを調べました。 四角形の細胞の並ぶ仮想空間を設定し、初めに門脈細胞のない状態でパラメータを変化させてNotchシグナルの空間分布を調べました。この時、それぞれの細胞のNotchシグナル強度が不均一になって安定する場合と、均一になって安定する場合があることを確かめました。


次に、Deltaを多く持つ門脈細胞をそれぞれの場合の仮想空間に置いたと想定し、Notchシグナルの空間分布を調べました。Notchシグナルが不均一になって安定する場合には、Notchシグナルの高い細胞と低い細胞が散在したのに対し、均一になって安定する場合にはNotchシグナルの高い細胞が門脈細胞の隣にだけできました。従来提唱されていたNotchシグナルの空間分布は前者に似ており、今回解析した胆管分化パターンは後者に似ていました。


この結果は、胆管の形成など限局した空間での分化誘導には、門脈細胞のような特異な細胞の存在に加え、Notchシグナルが均一になって安定する状況も重要である可能性を示しています。本研究成果は、将来的に三次元人工臓器の作製において自在に細胞を配置するための手掛かりになる可能性があります。


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研究代表者

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高橋 智 教授

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