医療?健康

感情を捉える非接触AIで医師の共感負担を軽減する新技術を開発

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(Image by PeopleImages.com - Yuri A/Shutterstock)
 非接触センサーとAIを組み合わせた感情認識技術により、患者の感情を高精度に推定し、医師の共感的対応を支援できる可能性を示しました。医師が患者の感情を客観的に把握できると同時に共感疲れの軽減にもつながり、医療現場における医師の新たな支援手段になると期待されます。

 医療現場では、患者の感情を正しく理解し、適切に対応することが、治療効果や患者満足度の向上に大きく関わるとされています。本研究では、患者の音声や医師との会話内容、生理的反応など複数の情報を組み合わせた「マルチモーダル感情認識」技術を非接触で実現する、新しいフレームワークを開発しました。

 この技術は、患者の身体に触れることなく心拍や呼吸といった生理データを取得し、音声や発言内容と統合して感情を高精度で分析します。がん診療を模した熟練医師と訓練を受けた模擬患者による面談を行い、患者自身が記録した感情をもとに、医師とシステムの感情の読み取り精度を比較しました。その結果、感情をどれだけ正確に捉えられたかを示す指標で、システムの方が医師よりも高いスコアを示し、より正確に感情を認識できることがわかりました。

 従来、医師の共感力は非常に高いとされてきましたが、本研究は、AIが複数の情報を融合して処理することで、専門医を上回る感情認識を実現できる可能性を示しています。また、非接触技術により患者の身体的?心理的負担を抑えつつ、自然な対話環境で感情データを取得できる点も大きな利点です。

 本成果は、医師が患者の感情を的確に把握するための新たな支援手段となり、医療者の「共感疲れ」の予防にもつながることが期待されます。今後は、実際の医療現場での実装や、高齢者ケア、メンタルヘルス支援など、他の医療領域への応用も視野に入れ、さらなる検証と改良を重ねていきます。

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プレスリリース

研究代表者

网上哪里能买篮彩システム情報系
善甫 啓一 准教授

掲載論文

【題名】
Framework for Emotion Recognition Using Cross-Modal Transformers With Non-Contact Multimodal Signals Aiming Clinical Service Support
(臨床サービス支援を目的とした非接触マルチモーダル信号とクロスモーダルトランスフォーマーを用いた感情認識フレームワーク)
【掲載誌】
IEEE Access
【DOI】
10.1109/ACCESS.2025.3573648

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